オレガオモウコト

俺の愛している人は、結婚しています。

小さな幸せ

「この中から、好きなのを選んで。」

「なーに?」

彼女の手に渡したのは、様々な商品が載っているカタログ。

何かのお返しで届いた物だけど、俺には欲しい物が無かった。

「なんでもいーの?」

「いいよ。」

彼女は、楽しそうにパラパラとページをめくった。

 

「お財布は?」

「今のでいい。」

「バッグは?」

「使わない。」

「南高梅の詰め合わせ。」

俺が梅干を嫌いなのを知っていて、わざとそう言う彼女。

「もう食べ飽きた。」

「嘘ばっかりー(笑)」

 

何処かお店に入っても、いつもメニューを決める時間が長い彼女。

「こうやって悩む時間も楽しいんだよ?」

そういう考え方、彼女らしいな。

そんな彼女だから、中々商品が決まらない事はわかっていた。

俺は煙草に火を着け、目をキョロキョロさせてカタログと格闘する彼女を見つめる。

楽しそうにおもちゃで遊ぶ小動物みたいで、ずっと見ていても飽きない。

「あ、これ!これがいーな。」

彼女が選んだのは、梨。

「好きなの?」

「うん!」

「じゃあ、それにしよう。番号書いて。」

俺は、彼女に注文用のハガキを渡した。

 

あれから一か月。 

「昨日くれた梨、とっても美味しかったよ。ありがとう♪」

さっき、彼女からそうメールが届いた。

ハガキを出してからかなり時間がかかったけど、ようやく彼女に渡せた。

「たくさん食べるんだよ。」

小さな幸せでも、二人で笑顔になれる。

彼女が喜んでくれて、良かった。