オレガオモウコト

俺の愛している人は、結婚しています。

映画デート

薄暗い館内で、俺たちはいつものように手を繋いで座った。

そして、一番後ろの席から大きなスクリーンを眺め、二人で見知らぬ異世界へと吸い込まれて行く。

ストーリーが進むにつれ、彼女の手から様々な感情が伝わってくる。

 面白い場面では、それは小さな笑い声と共に。

悲しい場面だと、すすり泣く声と共に。

暗くて彼女の表情はハッキリと見えないけれど、それだけで映画の中のヒロイン並に感情の起伏を感じる。

映画の後半、彼女の涙は止まらなくなった。

彼女は一生懸命な人に弱い。

ヒロインの真っ直ぐな正義感と、その彼の真っ直ぐな愛のひたむきさに、きっと彼女の心は張り裂けそうになったのだろう。

 

エンドロールが始まり、半数以上の客が席を立った。

「行くか?」

「ううん。ちゃんと、最後まで観る。」

彼女は言う。

館内の照明が点くまでが、一本の映画なのだと。

彼女らしい世界観だと思った。

 

「いい映画だったね。」

「そうだな。」

「またいいのがあったら、一緒に観ようね。」

映画が始まる前の予告で、何本か良さそうなのがあったな。

また二人で一緒に行こう。

僅かな時間の、異世界への旅に。