オレガオモウコト

俺の愛している人は、結婚しています。

隙だらけの彼女

 

昨日、彼女は見知らぬ男に声を掛けられた。

電話がかかってきて俺が店の外に出て、少し目を離した隙に。

店に戻った俺は彼女の後ろに立ち、相手の男を軽く睨んでやった。

よく見ると、彼女の両手には大量のポケットティッシュが。

「説明、聞いてたの。」

どうも、自宅に設置するミネラルウォーターのセールスらしい。

彼女はこういう誘いに弱い。

多分、雰囲気に妙な隙があって、声を掛けられやすいタイプなんだろう。

 

「もういいから、行こう。」

「でも、こんなにたくさんもらっちゃったから・・・。」

そう言って、俺に山盛りのポケットティッシュを見せる彼女。

「いいから。」

俺が肩を掴んで歩くように促すと、

「あ・・・待って。」

彼女はセールスの男に向かって、それを差し出した。

「最後までお話聞けなかったから、これ、返すね。」

すると、店員は。

「いいですよ。全部差し上げます(笑)」

彼女は男に礼を言い、後ろめたそうに歩き出した。

 

「なんか、悪いことしちゃった・・・。」

「沢山あるんだから、気にしなくていいよ。」

「バッグに入りきらないよー。」

そう言いながら歩いている彼女に、また違う男がティッシュを渡してくる。

「さっき、あっちでいっぱいもらったから。」

「うちのももらって下さいよー。」

俺は彼女の前に立ち塞がり、そのティッシュを横取りした。

 

「佐藤さん、ティッシュ欲しかったの?」

 

そうじゃなくて。

 

実は、彼女と初めて会った時から俺はそれに気付いていた。

隙だらけというか、無防備というか。

彼女には、まったくガードという物が無い。

だから、初対面の相手とでも、まるで知り合いかのように話す事が出来る。

 

スーパーの試食販売もそうだ。

「あのおばあさん一生懸命頑張ってるから・・・買ってくる!」

そう言って、試食もしないで沢山カゴに入れてくる。

「頑張ってねー。」

彼女はいつも笑顔でそう声を掛けて手を降り、嬉しそうに俺の元へ戻ってくる。

どうも、相手が年配の人ほど買いたくなるらしい。

 

少々呆れてしまうけど、そういう彼女が、俺は大好きだ。