オレガオモウコト

俺の愛している人は、結婚しています。

まるで夫婦のように

 

俺は、時々錯覚を起こしてしまう。

彼女は既婚者じゃない、と。

 

彼女は、普段ほとんど自分の家庭の話をしない。

子供の話はたまにするけれど、旦那の事は一切口にしない。

それはきっと、俺に対する配慮として意識的にしてくれているんだと思う。

 

彼女の陰には、誰も存在などしない。

 

彼女の気配りは、俺にそう思わせてくれる。

 

二人で過ごしている間、俺たちはまるで普通の恋人同士のようだ。

外食をした時は、俺の財布を渡して彼女が会計を済ませる事もある。

まるで、夫婦のように。

 

買い物をしていても、家でのんびり過ごしていても、普通の結婚生活の一部を切り取ったかのように、俺たちはごく自然に一緒にいる。

だから、俺は時々忘れてしまう。

彼女が既婚者だという事を。

 

もし、彼女が独身だったら。

 

俺は、迷わず彼女と結婚をするだろう。

プロポーズをして、入籍をして、夫婦になる道を選ぶだろう。

でも、そんな幸せな時は永遠に来ないと思っている。

彼女の描いている夢も理想も、それに相反するジレンマもすべてわかっているから。

 

俺は、形式なんかに拘ったりはしない。

夢は、夢のままでいい。

 

俺の人生の中に彼女が存在して、俺を見つめる彼女がいてくれたら、それだけでいい。

 

彼女が俺を愛してくれていたら、それだけでいい。