オレガオモウコト

俺の愛している人は、結婚しています。

離してやらない

 

昨日、遅い時間に彼女から電話がかかってきた。

俺は、何かあったのかと思い急いで電話に出た。

 

「もしもし、結美?」

 

 

彼女は、何も言わない。

 

「結美」

 

「結美」

 

「どうした?」

 

電話の向こうから、少し乱れた呼吸が聞こえる。

俺は、もう一度彼女の名前を静かに呼んだ。

 

「結美」

 

「うん・・・。」

 

彼女は泣いていた。

その後も、彼女は言葉を発する事が出来なくて、ただ、俺の声を聞いていた。

 

「結美」

 

「結美」

 

「明日、迎えに行くから。」

 

「うん・・・。」

 

彼女の心の扉が開きかけたのを、俺は見逃さない。

俺と離れたくない気持ちがわかるから。

俺に手を引っ張って欲しいと願っているのがわかるから。

 

まだ愛情があって迷っているのなら、俺が引き戻す。

まだ俺を愛しているのなら、俺は君を離さない。

離してやらない。

 

翌日、俺はいつもの時間に彼女を迎えに行った。

車に乗った彼女は、黙ったまま俯いていた。

俺は彼女の肩を掴んで引き寄せ、俺の胸に埋めた。

 

彼女は涙をこぼしながら、俺にしがみついてきた。

彼女の温もりを感じたその時、俺はそっと目を閉じた。

 

やっと、帰ってきてくれた。

 

そんな安堵感に、心が包まれた。