オレガオモウコト

俺の愛している人は、結婚しています。

指輪

 

「指輪、欲しいな。」

 

ある時、彼女がそう言った。

 

「いいよ。一緒に買いに行こう。」

 

俺は、彼女の望みなら何でも叶えてやりたい。

いつも、いつでもそう思っている。

 

 

でも、彼女は小さく首を横に振った。

口元は微笑んでいたが、何処か寂しそうな表情だった。

 

何も言わなくても、俺にはわかる。

もし俺が指輪を買っても、彼女は普段はめる事が出来ない。

俺といる時だけはめたとしても、指に跡が残ってしまう。 

 

俺たちは、形として残るものは持てない。

持ってはいけない。

だから、一緒に撮った写真も一枚も無い。

残っているのは、形の無い、想いと記憶だけだ。

 

君は、俺が「いいよ」と言っただけで満足なんだね。

本当に買わなくても、俺が同じ気持ちになっただけで嬉しいんだよね。

でも、俺は君に指輪を買ってやりたい。

二人の愛の証として、二人の名前が刻まれた指輪を。

 

いつか、買いに行こうな。

二人で。