オレガオモウコト

俺の愛している人は、結婚しています。

たとえ、会えなくなっても。

 

夜の闇は俺たちを上手く隠していてくれたが、時の流れはそれを許してはくれなかった。 

彼女の自由な時間には限りがある。

そう、独身の俺とは違って。

 

俺たちは、お互いの温もりを肌に残したまま別れた。

 

「明日、迎えに来るから。」

「うん。」

 

彼女は笑顔で俺に手を振り、いつもの道を小走りで帰って行った。

 

 俺は車を走らせながら、煙草に火を着けた。

窓を全開にして走ると、涼しい夜風が舞い込んできた。

 

彼女と短い時間しか会えない事はわかっていた。

それでも、俺は構わない。

普段なら会えない筈の時間帯に会えた事、夜の闇に包まれて安心している彼女の顔が見られた事が、単純に嬉しかった。

 

本当は、彼女をもっと自由にしてやりたい。

自分の気持ちに正直に、生きさせてやりたい。

でも、俺は自分でもわかっている。

俺には、彼女に自由を与える力など無いという事を。

 

彼女が自由を手に入れるには、旦那と離婚をするしかない。

でも、彼女には今の生活を捨てる事など出来ない。 

 

彼女はきっと俺よりも苦しんでいる。

そんな中でも、俺との繋がりを切らないでいてくれる。

 

俺は彼女が二人の繋がりを切らない限り、彼女を愛し続ける。

いや。

たとえもう会えなくなったとしても、俺は、彼女を想い続ける。