オレガオモウコト

俺の愛している人は、結婚しています。

彼女が不安を抱えている時

 

彼女は、俺の事を名字に「さん」を付けて呼ぶ。

俺は、彼女の下の名前を呼び捨てにしている。

 

時々、彼女はメールで俺の名前を呼ぶ。

 

「佐藤さん」

 

突然こう呼ぶ時は、彼女の心が少し寂しい時だ。

俺は、すぐに彼女の名前を呼ぶ。

 

「結美」

 

すると、昨日はこう返ってきた。

 

「私のこと、好き?」

 

 彼女が俺の気持ちを確認する時は、何か不安を抱えている事が多い。

だから、俺は文字で彼女を安心させる。

 

「愛しているよ、結美。」

 

携帯を手に安心する彼女の表情が、目に浮かぶ。

本当なら、すぐにでも車を飛ばして会いに行きたいが、それは出来ない。

俺が行けても、彼女が家を出られないからだ。

 

「うん」

 

笑顔の絵文字と一緒に、その言葉が送られてきた。

 

「明日、迎えに行くから。」

「はい」

 

また、笑顔の絵文字付き。

 

こんな風に、言葉でしか接してやれないのがとても歯痒い。

でも、俺にはこうする事しか出来ない。

 

翌日、俺は彼女の心にそっと触れてみる。

 

「何か、あったのか?」

「ううん。もう大丈夫。」

「そうか。」

 

俺はいつものように彼女の手を握り、車を走らせる。

彼女は、俺が買っておいたジュースを飲みながら、俺の横顔をじっと見つめる。

 

それが、会えた時の最初の楽しみだと、彼女は前に言っていた。

そんな小さな事を楽しみに生きている彼女が、俺は愛しくてたまらない。

 

そう思いながら、俺は彼女との時間を大切に生きていく。